【観劇記】ぼくらのいもうと(宇都宮大学演劇研究会)

11/23(金)に宇都宮大学演劇研究会の公演を観に行きました.

『ぼくらのいもうと』あらすじ(脚本の中野劇団ホームページより引用)

匿名の人物によって インターネットの片隅にアップされ 局所的な反響を呼んだ小説『天空』 その物語を読んだ一人のファンが ある掲示板へ書き込む 「天空高校は俺の母校かも知れない」 そして、オフ会が開かれる

駅前のマンションに住む安堂寺杏奈は、 仕事の大事な契約をとるために、 取引先の担当者であり、大学時代の先輩でもある 笹原という男を待っていた。 インターホンが鳴る。 杏奈がドアを開けると、現れたのは職場の部下である 昆陽という男だった。 彼はいきなり部屋に入って来て、 おもむろにノートPCを取り出すと、 ある場所を盗撮盗聴しはじめた。 盗撮しているのは同じマンションの別室で、 今から某巨大掲示板のあるスレッドに集まる者による オフ会が始まろうとしていた。 そこに盗撮カメラを持たせてスパイとして潜入しているのは 昆陽の妹。

2つの部屋を舞台にした一幕物コメディ!

感想

演出

開演前の前説を演出と助演の二人で小気味良くこなし,その呼吸のセンスが劇中でも垣間見えました.“オフ会"では常に人々が会話しているために舞台がキャストだらけでしたが,キャストを上手く捌いて個々の魅力を引き出せていたように思います.また"誠一"と"朴”(主役とその親友)の掛け合いも気持ちの良いものでした.

キャスト

  • 安堂寺杏奈

とても声が通り,しかも柔軟に演技の出来る方だなあという印象でした.深く言及するとネタバレになるので控えますが,ストーリーが進むにつれてより深く役柄を表現されていました.

  • 昆陽誠一

今回が2回目の演劇とのことでしたが,全くそのようには思えないほどに『誠一』を演じられていました.序盤で杏奈の部屋に突然現れ,怪しげながらコミカルな感があり,とても楽しい役でした.またその後は物語の核心に迫るごとに,丁寧に気持ちの描写をされていました.今後も楽しみなキャストさんの一人です.

気味の悪い姿で突如として現れ,毅然としながら周囲を驚かす数々の言動をこなし,まさに怪演という言葉が相応しい方だと思いました.『朴』自体は物語の核心に深くは関わってなかったように思いますが,存在感はピカイチでした(存在感がありすぎて,むしろ重要な役割があったような気がしてならない).是非またこの方の演技を観たいです.

  • 笹原

じっくりと落ち着いた演技をされており,対して中盤以降で"とんでもない"状況になった際の切り返しが強いギャップとして記憶に残りました.基本的にはキャラクターがしっかりしていて,態度を変えたときの差のつけ方が巧みでした.

  • 悦子

落ち着いた雰囲気を見せつつ,時に間の抜けた発言をするなど(トンデモなく恐ろしいことも),非常に魅力的な方でした.落ち着きと砕けた姿の調節具合が非常に素晴らしく,今回の舞台における隠れた名優だったのではないかと思います.

  • 悠太

ハキハキとした口調で,大人数の舞台でもしっかりと存在感がある演技をされていました.しかし役柄がイロモノ揃いだったので,俳優さんからするとなかなかに難解な舞台だったのではないかと思います.他の役をされている舞台も観てみたいです.

  • 硬い彗星

序盤は何だか冴えないように思っていたのですが,まさか,のタイミングで物語に深く関わる人物だと明らかになり,その後は主張強く役を演じられていました.この方も大学で初めて演劇をしているとのことですが,前述の"主張"の強さの踏み込みがとても経験の浅い風には思えませんでした.またも今後が楽しみな方が現れてしまいました.

  • 昆陽ミチル

ある人物に成りすましてオフ会の会場に潜入し,兄 誠一とオフ会参加者に挟まれて騒動の渦中に飲み込まれていくのですが,他の参加者にバレないように振る舞う演技が印象的でした.“演技をしている演技"は中々に難しいものですが,とても堂々とこなしており格好良かったです.

  • 夏候惇

ステレオタイプのオタク役で,一貫して不気味さを併せ持つコミカルな人物を好演されていました.この方の演技は1, 2年前から観ているのですが,劇的な成長を続けており,今回の役も経験を活かして(?),見事に演じられていました.ちなみに直近で別の団体の公演にも参加するそうです.行きたいですね…

  • ぱふぱふ

声,表情,動きのどれをとっても不満が無く,とても完成された演技をする方でした.特に"異なる話題に及ぶ場面"や"会話の途中に参入する場面"などにおいて,直前まで話していたキャストの会話との間の取り具合が絶妙で,非常に感激しました.昨年の学祭公演『鳩とか腹とか振り子とか、きっと君の体内には廻るクロニクル』で初めて観たときから非常に気になっていた方で,またこうして観られて嬉しかったです.

スタッフ

舞台設計が非常にオシャレだと感じました.今回の舞台はマンションの一室が二つ並ぶ関係上,非常に横長にならざるをえません.しかしカーペットを舞台の両側で斜めに敷き,残りの床は会場である峰ヶ丘講堂の木のままにしたことで,舞台が対称的かつ落ち着いた印象でした.とても素敵な部屋に思えました.

最後に

公演時間は約二時間と非常に長い舞台だったにも関わらず,楽しくあっという間に時間が過ぎてしまいました.公演が面白かっただけでなく,素敵な俳優さんたちと出会うことができ,とても良い舞台が観られたと思います.今後の公演も是非観に行きたいです.


演劇

2308 Words

2018-11-24 15:00 +0000